仏教の本山

お寺に行くと「総本山」とか「○○派」と書いてあることがあります。

本山とは、寺院の宗派で中心的な役割のお寺を示します。また、その本山に属しているお寺を末寺といいます。神社と違いお寺の宗派は、本山を中心に本社と支社のような関係性があります。現在のフランチャイズ店のようなイメージに近いと思います。

寺請制度と本末制度

江戸時代に江戸幕府は、お寺を中心に人々の管理を行うようになりました。この制度を寺請制度といい、すべての人はどこかの寺院の檀家にならなければいけないのです。現在で言うと戸籍制度に近く、檀家台帳や宗門人別改帳と呼ばれています。

さらに各寺院を統制するために、本山・末寺の関係を築くことになりました。各寺院は必ず宗派の本山に属することになりました。本山には末寺帳の提出を義務づけていました。

明治維新後

明治維新後は、江戸時代の寺請制度は廃止されました。その代わりに氏子調というかたちで、神社が戸籍管理する制度が決まりましたが、2年で廃止されてしまいました。

また、廃仏毀釈運動が興り、廃止されたり整理されてしまった寺院も多くありました。寺子屋として、子どもの教育が行われたものも学校に変わり、お寺の機能は大幅に削減されていきました。

しかし、葬儀埋葬法が制定されたことで、自由に行われていた葬儀は必ず神官または僧侶に依頼するように決められました。これにより特に仏教は葬式を行う宗教として位置づけられていきました。

また、明治5年には、神仏合同で大教院が設立されました。宗教関係の教育研究機関ですが、宗教統制を目的としています。一宗一管長制が決められ、宗派名と教義の統一をはかられることになります。

しかし、あまりに性急であったことや、院内で仏教用語が使えない、西洋的な哲学の教育システムなどで破綻して、各宗の大教院制度に転換しました。これが現在の仏教系大学の流れに組み込まれています。

例えば、立正大学は、1580年に設立された日蓮宗の教育機関「飯高檀林」を起源とする大学ですが、明治5年の日蓮宗小教院が立正大学創立の起点としています。

駒澤大学は曹洞宗が設立した学寮「旃檀林」が起源ですが、大教院解散で出来た「曹洞宗専門学本校」が合流するかたちで発展しています。

宗教団体法

大日本帝国憲法下では、秩序などを妨げなければという限定付きで信仰の自由を認められていました。その反面、宗教法人に関する法律はありませんでした。何度か法案は提出された物の決議されず、宗教団体は法人化出来ませんでした。

1939年に宗教団体法が制定され、神社を除く宗教団体も法人化出来るようになりました。しかし、宗教団体を国家の統制下に置くことが目的とされたものとされています。大日本戦時宗教報国会は、神道、仏教、キリスト教の各派の宗教家で結成されて戦争に協力したと言われています。

第二次世界大戦後

日本が敗戦するとGHQが神道指令を出し、宗教団体法を廃案とし、宗教法人法が制定されました。これにより信仰の自由が保障され、宗教団体の財産に関しての保全も可能になりました。

56派あった仏教の宗派は、第二次世界大戦終結時には28派に整理されていました。しかし、戦後宗教団体法が廃止後に従前の宗派が復活したり、新しく宗派として分離することになりました。

天台宗

天台宗は総本山を比叡山延暦寺を中心として、別格本山が8つあります。特に上野寛永寺は関東総本山として江戸時代は比叡山をしのぐ権威がありました。

現在天台宗から分離した単立の寺院が多くあります。

浅草寺(聖観音宗)は天台宗から分離独立していますが、天台宗とのつながりはあるようで、延暦寺の修復の案内が境内に掲げられていたりします。

鞍馬寺(鞍馬弘教)、四天王寺(和宗)などや仏教系修験道の金峯山寺(金峯山修験本宗)や聖護院(本山修験宗)なども天台宗から分離独立しています。

浄土宗

浄土宗は知恩院を総本山として、七大本山があります。これは鎮西派のようですが、浄土宗鎮西派という表記を見ることはほとんどありません。西山派というのもあり、京都の紅葉で有名な永観堂が総本山です。

日蓮宗

日蓮宗も身延山久遠寺を総本山として、七大本山があります。

日蓮宗不受不施派や日蓮正宗があり、日蓮宗とはほとんど関係が無いと思われます。

曹洞宗

曹洞宗は福井の永平寺と横浜の総持寺を二大本山としています。全国の曹洞宗のお寺は永平寺派の「有道会」と總持寺派の「總和会」に分かれているそうですが、寺院がどちらの派に所属しているのか掲げているお寺は見たことがありません。管長は2年交替で永平寺と総持寺が交互に就任する慣例になっています。お経や教義なども特に違いがありません。

臨済宗

臨済宗は最も寺院数の多い妙心寺派を筆頭に多数の派に分かれています。京都五山(南禅寺(別格) 、天龍寺 、相国寺、建仁寺、東福寺、万寿寺)と鎌倉五山(建長寺、円覚寺、寿福寺、浄智寺、浄妙寺)や大徳寺(茶道)、金閣寺、銀閣寺など有名な寺院が多くあります。臨済宗としての包括宗教法人は特にないようです。

真言宗

真言宗の大本山は東寺(教王護国寺)です。天台宗を台密というのに対し真言宗を東密というのは、東寺の密教というところからです。高野山は開祖の弘法大師が開いた山とのことから金剛峯寺も総本山を名乗っています。高野山には100以上のお寺が密集しています。真言宗は東寺真言宗や高野山真言宗という名称は見られるものの、真言宗としての包括宗教法人は特にないようです。

浄土真宗

様々な宗派に分かれています。本願寺派の本山は西本願寺(正式名称は本願寺)、真宗大谷派の本山は東本願寺(正式名称は真宗本廟)、東本願寺派の本山は東本願寺(東京本願寺)、真宗高田派の本山は専修寺(三重県)など多数あります。

真宗教団連合という浄土真宗系の教団で結成する団体があり、相互連絡提携をしているそうです。事務総局は二年ごとに本願寺派と大谷派が交代で担当しています。

法相宗

奈良仏教の宗派で薬師寺と興福寺を大本山としています。

法隆寺を大本山とした聖徳宗は末寺が29寺、京都の清水寺は北法相宗として独立しています。

華厳宗

奈良仏教の宗派で東大寺を大本山としています。

律宗

奈良仏教の宗派で唐招提寺(奈良)を総本山、壬生寺(京都)を大本山としています。