神社での参拝には、こうしなければいけないという決まりは特にありません。しかし、作法はあり、一般の参拝者でも、ある程度この作法に則っておくべきだと考えます。
神社は日本の古来の信仰形態から自然に発生した物が様式化して生まれています。歴史とともに様々な変遷があり、現在では統一した形式が定着しています。
しかし、その土地や人々が昔ながらに伝わる信仰や独自の風習があります。これらを否定しないのが神道の特徴です。今でも神社でお経を読む人や団体がいますが、これを禁止していません。
だからといって、神社の儀式や作法が各神社毎に違いがある訳ではありません。神職を育成する機関もあり、日本全国の神社でほぼ同一の様式が保たれています。
なぜ作法があるのか?
第一は神様に対する姿勢が挙げられます。神様から見て、どのように振る舞えば美しいのか、見苦しくないのかという観点から、昔から伝わる作法に従うのは理にかなっています。
自宅にお客さんが土足で入ってこられたら、かなりイヤな感じがします。しかしアメリカの家に招かれたときに、玄関で靴を脱いだら、困惑させてしまいます。
このように文化に根付いた作法があり、これに則って行動するのは大変重要なことです。
次に重要なのは、これらの作法は長年の生活の知恵が入っています。これらの作法に則ることにより合理的に行動できます。
神社に入るには
鳥居
通常神社の入り口には鳥居があります。この鳥居に入る前に軽く頭を下げます。これを「揖(ゆう)」といって、様々な行動に入る前に行うお辞儀です。
鳥居にに入るときは、真ん中を避けて、左右どちらから入ります。左側から入る場合は左足から、右側から入る場合は右足から、入ります。これは神様のいる社殿から遠い足から入ることになります。
参道
参道も真ん中を避けて歩きます。真ん中のことを「正中(せいちゅう)」と言います。
一般には真ん中は神様の通り道だからと聞くことがあります。
そのような考え方もありますが、神様の通り道と言うよりも、神様と相対する事を避けるためです。人間同士でも、自分に向かって正面から来られたら少し怖いなって感じることがあると思います。少しずれるだけで、その圧迫感が無くなります。このように神様に対しての気遣いだと思ってください。
お正月のように混み合って並んでいるときは、真ん中に並んでしまっても問題はありません。
手水舎(てみずしゃ)
多くの神社には手を洗う場所があります。これは神様に会う前に心身を清めるという意味があります。
手水舎には、柄杓があれば、右手で柄杓の柄を取り、水盤から水をくみます。
この水で左手を洗います。
次に柄杓を左手に持ち替えて、右手を洗います。
次にまた右手に持ち替えて、左手で水を受けて、口をすすぎます。
このときに柄杓に口をつけるのはやめてください。
口を清めた水は飲まずに、水盤の下に吐いてください。
左手を再び水で清めます。
最後に柄杓を縦にして、柄杓の中に入っている水を柄に垂らすかたちで柄を清めます。
この一連の動作を1杯の水で行います。
(濡れた手はハンカチで拭きましょう)
このようにすると美しく、効率的に清めることが出来ます。
現在は、1杯の水で行わなくても、水が自動的に湧き出てくるようになっています。
しかし、昔は水盤には水を汲んでおく必要があったので、1杯の水で行うことに意味がありました。
現在は新型コロナのこともあり、自分の使った柄杓の柄の部分はしっかり洗っておいて欲しいので、もう一度救ってしっかり洗っておく方が良いかもしれません。伝統的な作法は上記の通りですが、臨機応変に行動しても良いと思います。
柄杓の介添えがある場合
自分で柄杓を使って行うだけでは無く、ご祈祷などの場合、巫女さんが柄杓を持って水を注いでくれる場合があります。
この場合は、もっと簡単です。
柄杓の位置に合わせて、両手を差し出します。
すると巫女さんは水を流してくれますので、これで両手を清めます。
その後、両手をお椀型にして、水を受けます。
巫女さんが水を流してくれますので、手で受けて口をすすぎます。
口の中の水は下に吐きます。
最後にもう一度手を清め(水を流してくれます)ます。
濡れた手は、半紙などを渡されますので、それで手を拭き、所定のゴミ箱に捨てます。
社殿
神前に進んだら、鳥居の前で行ったように軽く会釈{揖)を行います。
鈴があれば、鈴を鳴らします。そしてお賽銭を賽銭箱に入れます。
人によっては、先にお賽銭を入れてから、鈴を鳴らすという方もいます。
鈴が先というというのは、鈴で祓ってから、お賽銭(お供)を行うという考え方に基づいています。
お賽銭が先という考え方は、鈴は神様の呼び鈴であり、先にお賽銭(お供)をしてから、呼ぶという考え方に基づいていると思われます。
鈴は綱を横に振っても鳴らないことが多いので、綱を縦に振ります。あまり乱暴にすると壊れやすくなりますので、ほどほどに行ってくださいね。
2拝2拍手1拝
軽く会釈を行います。
その後、2回深くお辞儀します。(拝)
手を合わせ、右手を指の関節一つ分程度下げます。
手は肩幅程度に開いて2回柏手を打ちます(拍手)
2回目の拍手の際に手を合わせたままにし、下げた手を上にずらし手をそろえ、終わります。
手はおろし、最後にもう一度深くお辞儀をします。(拝)
終わって下がるときに、軽く会釈{揖)をして、その場を去ります。
拝をするときに、手の位置を気をつけましょう。
男性は太ももの外側に手をつけるかたちで、お辞儀したときに自然とちょっと内側に入るぐらいが良いと思います。
女性はまたのちょっと上あたりに手を重ねる形が良いと思いますが、へそのあたりで手を組むのはちょっとおかしいと思います。マナー講師がこのような作法を指導している場合もありますが、これは日本の作法ではありませんので、ご注意ください。
(結婚式などで、和装をしている際に、扇子などを持つ場合があります。この場合は、手の位置が少し上になります)
拝礼の後に、その場を去る際は社殿に直接反転してしまうと、神様にお尻を向けてしまうことになります。これは失礼なので、1、2歩後ろに下がってから左右にはけるのが良いでしょう。
授与所
おみくじは社殿の脇にある場合がありますが、お札やお守りは授与所にあります。
お守りなどが欲しい場合は、お参りが済んだら授与所に向かいましょう。
ご祈祷をする場合
ご祈祷や正式参拝をお願いする場合は、社殿に参拝する前に直接、ご祈祷の受付所に向かってかまいません。
神職さんが直接お祓いやご祈願を行ってくれます。もちろん参拝してからご祈祷を依頼しても問題ありません。